Hello!!!!!! Buona tavola Tricolore ボナ タボラ トリコローレ

岐阜県大垣市にあるイタリアンベースの美味しいお食事とワインのお店です。

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第72話

第70話
第71話


シックスが俺の肩を抱き走った。
ポムラとシックスの動きがなければ、みんな捕まっていただろう。
ポムラはどうなったか分からない。
ポムラを信じて走るしかない。

シックスの力は弱々しくも力強く俺の肩を抱く。

刺激的な匂いが俺の鼻をさす。
シックスからだ。
雨にも流されないタバコの匂い。
全身に染み付いてる様な深く濃い匂い。


「大河、料理人ならタバコは止めるべきだ。」
よく、たけるが言ってた。


俺は、友達というのが苦手だった。
苦手というのか、1人が気楽でいい。
この何も景色に邪魔の入らない、小さな田舎を一望出来るこの山に俺はいつも来ていた。
何にも流されずここで1人でいる時間が好きだった。
ここでポータブルCDプレーヤーで音楽を聞いている時間が好きだった。

ある放課後1人の男が声を掛けて来た。
「ボブディラン好きなんだね。」
それが、たけるだった。

「机の上にCD置いてあったでしょ。昼休みに見たんだ。俺も好きなんだ。詳しくはないんだけど、その時代の曲がすごく好きで、まさかこんな近くに好きな人がいるなんて。」

馴れ馴れしく話しかけるたけるが初め俺はどうしても苦手だった。

しかしいつしか、俺の好きな場所に案内する様になったんだ。
誰1人一緒に来た事のない場所に。

いろんなCDを俺に聞かせてくれた。
いろんな雑誌を俺に見せてくれた。
またいろんな所に連れて行ってくれる様になった。
いつか小さくてもいい俺の自慢の店を持つんだ。
たけるのいろんな夢を聞かせてくれた。

たけるは、いつも輝いていた。そんなたけるに俺は惹かれ一緒にいる事が多くなった。

そして、たけるに薦められた音楽を聞き
たけるに薦められた服を好み
たけるに薦められた料理の世界に入り
たけるの前ではタバコを吸わなくなった。
そして、だんだん俺は俺という個人が無くなっていった。

たけるの流れに乗り、それが心地いいと感じていた。
しかし、それが無意識の内に圧力となっていったのかも知れない。
無意識の内に俺が勝手にたけるを圧力に仕立て、俺を閉じ込めていたのかもしれない。

朝、たけるにもらったコーヒーカップにコーヒーを入れる。
夜、たけるにもらったコーヒーカップにビールを入れる。

たけるにもらったコーヒーカップに口をつけるたびに俺は無意識にたけるを思い出していた。

俺は俺というものがない。
たけるの顔を伺うと言う事はないものの、俺は俺というのはたけるによって形成されている部分が多い。

圧力をかけているたけるをディアボラ(悪魔)と言うつもりはない。
俺が勝手に思っているだけだから。
そう思う俺の心の中の押さえ込まれているディアボラを押し潰して消してしまいたい。





  1. 2009/08/19(水) 21:33:40|
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第69話

第67話
第68話

行き着いた場所は、黒い服の男のいる場所だった。
ポムラとは顔見知りの様だが、なんだか気味が悪い。
そもそも、俺はこの男にいい印象がない。
ここで何をしている。
茂みに身を隠して。

俺も小さい時はよくこの山で遊んだもんだ。
虫をとったり、探検したり、それこそかくれんぼしたり。
思い出に執着する訳じゃないが、汚されているようで気分が悪い。

探していた3人のうち2人がここにいるのに、その先が見当たらない。
2人の会話から、関係者である事は容易に察する事が出来る。
しかし、解決口が見つからない。
男は夜にカフェでと言った。
夜になるとなんだと言うんだ。今じゃ駄目なのか?
それより、やはり最大の疑問はこの男はココで何をしてるのか?
いや、最大ではない。
ここで何してようがどうでもいい。たけるの事を教えてほしい。
聞きたい事は山ほどある。


ポムラは何も言わず歩き始めた。

「おい!待てよ。」
俺が止めるもポムラは立ち止まらず歩いていった。
大きな声を上げてしまい男に嫌がれるかと男を見ると、

男も小さな声を張り上げ
「まだ危険だ」と言った。
その顔は事態の深刻さを物語っていたが、ポムラは平気だと言い奥の方へ歩いていった。

なんなんだ? ポムラもこの男も。
もう夜になるのを待つしか他にない様だ。

俺は、いやたけると俺、いやもしかしたらポムラもこの男も激流の渦に巻き込まれてしまっているのだろう。
誰かが、意味もなくスプーンをぐるぐるぐるぐる回しているのだろうか?
ミルクも砂糖も入っていないコーヒーをぐるぐるかき混ぜる様に。

ココにいても仕方ないと思い、ポムラの後に付いた。
ポムラはチラリと後ろを見、俺を確認し何も言わず歩き続けた。

小道の脇のこれまた小道というのか道なき道を入り、開けた場所に出た。

背の低い小山は子供達の絶好の遊び場だった。
この山は全て知っているものと思っていたはずなのに、ココの場所だけは知らなかった。
絶景までは行かないまでも低いながら街を見渡せ気分がいい。
やりきれない気持ちも大分落ち着きを取り戻す事が出来た。
なんだか少しポムラがいい奴に思えた。


展望室とは違った景色を眺める。
ポムラはリュックをごそごそし、ビデオカメラを取り出した。
大型の角張ったごつごつしたビデオカメラだ。
「ははは。えらい古いカメラだな。」
ポムラの返事はないが、特に返事を求めてるわけでもなかった。

展望室と比べ街が近くに見える。
観覧車にツインタワー。
俺がいた時はこんなのなかったっけ。
昨日の晩たけるが言ってたな。
「ツインタワーと観覧車のおかげで街が若返った」って。
そうだな。大分ココも都会的になったな。

「なあ。ポムラ。夜になるとライトアップされてきれいになるみたいだな。
また落ち着いたら連れてってくれよ。」
この言葉には自分でも驚いた。ここにポムラと一緒に来るはずなんてもうないはずなのに。

ポムラは取り出したカメラを写す訳でも見る訳でもなく持ったまま景色を眺めているだけだった。
ビデオ見せてくれよと言う問いに全く答えないポムラ。
答える以前に全くの無視。
奪い取る様に手にとったビデオを見る。
電源を押し▷のマークを押した。
サーサーサーと音と言うのか微かな音だけの映像が映っている。
微かな音だけの映像。目で見えるのは真っ暗な場面。
真っ暗ながら微かに手の動きで写している場所を移動しているのが分かる。

「ポムラなんだよ。何も映ってないじゃないか?って言うより故障じゃないのか?俺が壊したわけじゃないぞ。ほら。」

と渡すと、ココからと答えた。

不思議な奴だ。
昨日だってそうだ。扉を蹴り上げたり、たけるに突っかかって来たり。お金を投げ逃げる様に店を出たり、
今一緒にココからの景色を見ているじゃないか?
見えるのは、観覧車にツインタワー。
今言っただろ。ライトアップされるって。


俺はいくつか話をしたが、ポムラは何も答えない。
今回は無視という感じではない。
話は聞いてくれているみたいだった。
なぜだかそれがちょうどバランスが良かった。

俺がこの街で産まれて育った事。
東京に行った事。
シェフをしている事。
帰って来た事。
なぜ10年ぶりに帰って来たかという事。
たけるの事。

俺は人と話をするタイプではない。出来るだけ必要じゃない人間との関わりは避けて来た。
なぜか、ポムラには話が出来る。
変わった人間ではあるが、話していくうちにポムラのあくが薄れていくようですごく話がしやすかった。
と言ってもほぼ話しているのは俺なわけだけで、少しの返事と相づちだけ。
もっとも話していくうちに返事と相づちは増えてはいる訳だが。

一番気になっているエプロンのコーヒカップの絵柄。
なぜかそれは夜のカフェでの方がいい気がしてならない。

6月の日中は長い。
夜はいつ来るのか。
夕日が街を赤く染めかかっている。

  1. 2009/08/17(月) 18:01:13|
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第66話

第64話
第65話

俺は、ぽむらに付いていくしかなかった。
名前だけ言い、こちらへと招いたぽむらに。

全てを支配している様で、その割にいくつかたけるにつっかかるぽむらに。
昨日もそうだった。
何かとたけるにつっかかっている。
理由は分からない。
俺の知らないたけるがそこにはあるのかもしれない。
やはりたけるが悪魔なのかも知れない。
そうであれば、せめて俺が制裁に立ち会わなくてはいけない。
なぜかそんな使命感が生まれた。


確かに見たんだ。


ぽむらが言ったコーヒーカップが逆さと。
昨日もそんな事を言っていたんだ。
何の事かは分からない。
何を示してるかも分からない。
それを指している事がどれだけ重要なのかも分からない。
もしかしたら全く意味のない事なのかも知れない。

ただ、俺は俺なりに冷静を取り戻している筈だったんだ。

それで確かに見た。


下を向いてるコーヒーカップを。
エプロンのコーヒーカップの絵柄が逆さ向いてるという事を。
そしてコーヒーがこぼれ落ち、それが何か悪魔が笑っている様に見えた。

いや、正確に言うとカウンターのガラスに映った姿がそう見えた。

俺は自分の目で見る事しか信じなかった。
俺はいつだってリアルの中で生きていた。
キリストも仏陀も興味がない。 俺のいない世界のそれも過去の者には興味がない。
もちろん宇宙人がどうとか、霊がどうとか俺は知らない。
俺が俺の目で見るまでは。

ガラスに映ったソレは何なのかは今は分からない。
ソレをどうするのかも分からない。
俺は支配者であろうぽむらの指示に従うほかない。

ぽむらが俺をこちらへと則した。

カフェの裏手の山へ向かっていた。
そういえば、たけるの畑も確かここだ。

「この辺のはずだ。」
ぽむらはそう言った。

「ポムラ無事だったか?良かった。」
昨日の黒い男が隠れる様にそこにいた。

  1. 2009/08/16(日) 00:26:47|
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第63話

第61話
第62話
2種類のものがあるという。

善と悪。光と影。月と太陽。
流れを作る者と流れに乗る者。

俺は、今まで流れに乗る側だった。 
ずっと今まで。
俺の意志はなく流れるままに。
多くはたけるが流れを作ってくれ、俺はそれに乗るだけだった。
日が繰り返され今まで生きてきた。
吸って吐いてを繰り返すだけ。

レコードに針を落とす。
針は溝をこすって音を出す。レコードを回して音楽を流す。
片面2曲のレコードは、すぐにカフェを静寂に戻すも針は溝のない所を指し空回りを続けた。

ミルクも砂糖も入ってないブラックコーヒーをスプーンで回す。
なぜだか分からない俺の癖で混ぜても仕方のない事を混ぜ続ける。
そこには意味とか理由とかは何もない。


ぐるぐるぐるぐるぐるぐる…。


なぜたけるが?どうして料理が出来なくなる?
もしかしたら意味も理由もないのかもしれない。

いくつかたけるにかけた声は1つも届かない。
たけるは、カウンターの隅で下を向いて泣いている。


いつも俺に流れを作ってくれるたけるが、誰かの何らかの流れに飲み込まれ涙を流している。
飲み込まれるというより、引きずり込まれると言うのが合ってるのかも知れない。
どちらが正解でも構わないが。
底の奥の方に重りを付けられ沈み込む様に。
ディアボラ(悪魔)風という調理法がある。
鶏肉に重りを付け押しつけて焼く、
悪魔を逃れられないよう重しを科せ、業火で処する様を見立てたという。
上からも下からも逃れられない。
逃れられない流れに乗らなければいけない。

そうするとたけるが悪魔なのか?
悪魔は刑に処されるべきなのか?
それともやはり流れを作った者が悪魔なのか?



俺は、ここに来た理由を思い出す。
吸って吐くだけの流れるままという現状を打破するためだ。
俺は俺の意志を持つためだ。
その1歩を踏み出すためだ。

たけるに作ってもらった流れに、俺は乗り気付くとある程度認められる地位まで流れ着いた。

恩返しという事ではない。今俺が流れを作らなくてはいけない。

俺は俺の頭の中を整理した。
出来た。
信じられる。信じられないを置いておいてでだ。
昨日の男・女・少年を探す。

探してどうなるか分からない。流れを止められるか分からない。原因がそれかも分からない。
ただじっとしている事よりかはどれだけもマシだ。
その先の事よりもまずは探すことを先決に考えた。


いた。


たけるを置いて、裏口から表に出た目の前に昨日の少年がいた。
何故かは分からない、どうしてなのか俺は少し安心した。


  1. 2009/08/14(金) 23:36:05|
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第60話

第58話
第59話

世の中は2種類で成り立っているという。
男と女。陰と陽。天と地。表と裏。

今の俺は、いや俺達と言うのか、いやたけるは
どちらの種類に属すのか?

追う者、追われる者。
消す者、消される者。

そうだ。弱者の方に属することになる。
結論はすぐに出た。
ただ、ただその理由が分からない。

弱者に属すのはこの際どうでもいい。ただ理由が知りたい。

なぜだ。なぜたけるなんだ。なぜ今なんだ。なぜ俺は何もないんだ。じゃあ俺は一体どこに属すのか。さっきの男達こそ何者なんだ。昨日のあいつらは。

疑問だけが頭の中をいっぱいにした。ただ事実を飲み込まなくちゃいけないのは必須なようだ。
俺は俺を整理する事でいっぱいだった。
何をするでもなく。何が出来るわけでもなく。
  1. 2009/08/09(日) 00:15:48|
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